2020/02/12 17:47
神石高原町のすごいこんにゃく。その1 新内農園さんの場合
神石高原町産こんにゃくがおいしい3つの理由。
その2 安全でおいしい天然の地下水を使っているから。
その3 少ない凝固剤でつくっているから。
その1 すごーくめずらしい在来種(和玉)を使っているから。
意外と知られていないこんにゃく芋の種類。
なかでも在来種はほんとうに稀少です。
「こんにゃくなんて、どこで買っても同じ」なんて、
あなたはそうおもってはいませんか。
こんにゃくには、じつはさまざまな種類があります。
そのもととなったのは、室町時代に伝わったといわれるもの。
以来、連綿と栽培されているのが「在来種」で「和玉(わだま)」とも呼ばれています。
「支那種」「備中種」が在来種の代表格。育成品種(品種改良のこと)としては
「はるなくろ」「あかぎおおだま」「みょうぎゆたか」「みやままさり」といった種類が誕生しました。
世の中に出回っているこんにゃくは、そのほとんどが育成品種です。
こうしたなかで最高品種であり、稀少とされているいるのが「在来種」。
「和玉」とも呼ばれる在来種です。
しかし、スーパーなどで「在来種(芋)」や「和玉」と表記されたこんにゃくを見かけることはあまりありません。
それはいったいなぜでしょうか。
在来種は病気・害虫に弱く、生育が遅い。
つまり、栽培がとても難しいのです。
こんにゃくの原料はこんにゃく芋。こんにゃく芋は、土の中で育ち、
芋のように肥大化した球茎をこんにゃくにします。もともとサトイモ科の植物です。
和玉と呼ばれるこんにゃく芋は、実は病気や害虫、水分や傷に弱く、しかも生育が遅い種類。
収穫できるまでおよそ3年から4年もかかってしまいます。
こんにゃくの原料となる球茎は、
大きければ大きいほどこんにゃくがたくさんつくれるのでいいのですが、
在来種に肥大性はさほどなく、生産効率が高いとはいえないものでした。
苦労して栽培したのに、数年の間には病気になったり、
市況の変化でおもったような収益が得られなかったりで、いってみれば農家泣かせ。
それでも、“黒いダイヤ”と呼ばれるほどの価値を持つこともあり、
長年続けてきたこんにゃくづくりを祈るようなおもいで続けてきたのです。
もっと病気に強く、収穫が早く、収量も多くできる品種はないのか。
そこで多くのこんにゃく農家は、生育が早く、生産効率のよいこんにゃく芋に
品種改良された育成品種を栽培するようになったのです。
こんにゃく農家は在来種に比べて育成しやすい、
品種改良されたこんにゃく芋を栽培するようになりました。
その結果、在来種にこだわりつづける農家は、
現代においてはとても稀有な存在となってしまったのです。
そんな時代になっても、かたくなに古来より伝わる在来芋にこだわり、
生産をつづけてきたところがあります。
広島県神石高原町のこんにゃく芋は伝統の在来種。
さまざまな困難を乗り越えて生産されています。
もともとは、神石高原町では和玉(わだま)と呼ばれる
在来種のこんにゃく芋を栽培していました。
しかし、植えてから収穫できるまで3年~4年もかかり、
市況の不安定さもあり、こんにゃく農家が安定した収入を得て生き残っていくのは
至難のわざだったようです。
時代の変化もあり、こんにゃく農家は廃業したり、
別な職業に就いたりするなどしてじょじょに減ってしまったのでした。
さらにいえば、在来種のこんにゃくはどんな場所でも栽培できる、というものではありません。
まず第一に、山間部の傾斜地でなければ栽培が困難なのです。
山間部の傾斜地でなければならないのは、陽の当たり具合と排水性を優先するから。
強い西日が当たり続ける場所、風通しの悪い場所はこんにゃく栽培には適しません。
風通しが大事だからといって、強風が吹くような場所ではいけません。
風が強いと葉がこすれ合って傷がつくことがあります。その傷が原因で病気にかかってしまうことも。
だから、風通しがよくて、しかも風は強くない、という場所でなければならないのです。
つぎに大切なのは、水はけ。水はけが悪いと、病気になってしまうことも。
山間部の傾斜地の畑では、農作業がたいへんなはず。
また、地方の山間部といえば、少子高齢化の波に襲われ、人口減少が危ぶまれている地域が多いことも確か。
担い手が減少するなかで栽培の難しい在来種こんにゃくを生産し続けるのは
まさに至難のワザ。
おまけに、植物としてのこんにゃく芋は、
日焼け、風害、病気に弱いため、手厚いケアが欠かせません。
土壌菌で病気が蔓延し、全滅してしまうことも。
それを避けるための工夫も加え、生産農家はさまざまな障害を乗り越えて栽培しています。
しかも植え付けはひとつひとつを土に埋める手作業が中心です。
栽培しているすべてが在来種。
デリケートなこんにゃく芋を大切に育てます。
広島県神石高原町の 新内農園さんは、昭和45年に創業。
現在では、約8ヘクタールもの作付け面積を誇ります。
これは、東京ドーム約5個分もの広さ。
しかもそのすべてが在来種。在来種のみでは日本一の規模です。
こんにゃく芋の植え付けは手作業が中心。
はじめに機械を使っても、最終的には手作業で整列させ、植え付けていきます。
機械でやればいいのに、と思うでしょう?
ところが、そうはいかないのです。
そもそもこんにゃく芋を生産者が思うとおりに植え付けてくれる機械などありません。
というのもこれには二つの理由があるのです。
一つは、こんにゃく芋を斜めに植え付けるため。
なぜ、斜めに植え付けるのか、というと。
こんにゃく芋の芽(主芽)が伸びるところには、大きなへこみがあります。
まっすぐに植えると、このくぼみに雨水などがたまってしまい、
こんにゃく芋が腐ってしまうのです。
これをさけるため、斜めに植えて、くぼみに水がたまらないようにしています。
そして、もう一つの理由は手作業で植え付けることで、
茎が成長しても1本1本が整然と並ぶからです。
こうすることで、こんにゃく芋の葉が予想外にこすれ合って傷がつくのを避けているのです。
こんにゃくは、葉に傷がついても成長度合いに影響するほど繊細。
整然と植え付けることで、その後の収量に大きく関わってきます。
こんにゃく芋は、1回植え付ければ、あと3年間ほうっておけばいい、
というものではありません。
種芋を植えると、新しいこんにゃく芋ができ、それが、地下茎を伸ばします。
そして春に植えたこんにゃく芋には、秋に生子(きご)というこんにゃく芋の子どもができます。
これを収穫して保存し、翌年の春に別な圃場(ほじょう)へ植え付けます。
これがこんにゃく芋の1年生。こうした植え付けを毎年繰り返すのです。
貯蔵しては、翌年の春に植え、ということを繰り返し、それを3年続けます。
しかも何度もいうように、こんにゃく芋はとてもデリケート。
この間に、病気や天候の影響を受けないよう注意深く育て、
3年から4年経ってようやくこんにゃく芋の収穫期を迎えるのです。
その2 安全でおいしい天然の地下水を使っているから。
在来種のこんにゃくがおいしいのは、
清冽な水と伝統的な製造工程に秘密があります。
新内農園さんでは、井戸を2本掘削しており、
中国山地の伏流水を地下58mからくみ上げています。
水温12℃、冬に降った雪が山に溶け出し、地下の伏流水となります。
それは天然ミネラルをたっぷり含んだ安全でおいしい水。
この天然水で、自社で収穫した生芋をまるごと洗浄。
その後、100℃で約3時間蒸し上げます。
蒸したてのこんにゃく芋は、まるでサトイモのような香り。
おいしい香りがあたりに漂います。
その後、ヘタなどを除去し、すりつぶしながら地下天然水と混ぜ合わせます。
こんにゃく芋をそのまま地下水といっしょにすりつぶすため、
グルコマンナンとでんぷん、繊維質がまるごとこんにゃくの原材料になるわけです。
皮もいっしょにすりつぶすため、自然な茶色に仕上がります。
これが伝統的な生芋まるごとすりおろし製法です。
その3 少ない凝固剤でつくっているから。
こんにゃくの独特のにおいは、凝固剤の匂い。
神石のこんにゃくには、それが少ないのも特徴です。
その後、凝固剤で固めますが、在来芋はグルコマンナンの含有量が多いため、
他の品種よりも凝固剤を少なくできるのです。
こんにゃくのにおいの主な原因は凝固剤として加える水酸化カルシウム。
神石高原町産の在来種(和玉)を使用したこんにゃくは凝固剤を少なくできるため、
こんにゃくにつきものの、あの独特のにおいが少ないのです。
そのため、新内農園さんのこんにゃくは、面倒なあく抜きが不要。
水洗いするだけですぐに料理に使えます。
おいしいしい理由は、
でんぷん+グルコマンナン含有量。
こんにゃく製造に不可欠な凝固剤が少なくできるため、
そしてまるごとすりおろすため、でんぷん、グルコマンナンの含有量が豊富です。
そのためこんにゃくの味・香り・粘りが違います。
粘り気が強いため、吸い付くような歯ごたえ。
香り高いのも特徴です。
伝統的なばた練り製法で、
空気を充分に練り込みながら、時間をかけて練り上げます。
こうすることで、弾力があり、味がよくしみるこんにゃくとなるのです。
新内農園さんでは、全商品に生芋を85%以上配合(有機商品は生芋100%)。
こんにゃく粉をつなぎに使用しています。これにより、グルコマンナン量がさらに増え、
粘りのあるしっかりとした食感が生まれます。
また、こんにゃくからの離水を減らし、品質を安定させているのです。
まとめ
いかがでしたか。
神石高原町のこんにゃくがおいしい理由、おわかりいただけたでしょうか。
こんにゃくには、在来種(和玉)という稀少な品種があり、
神石高原町の新内農園さんでは、この在来種にこだわって
おいしいこんにゃくをつくっている、ということ。
そして、こんにゃくづくりには、おそろしく手間と年月がかかり、
たいへんな作業が伴うものだということも。
さらには、こんにゃくづくりに凝固剤として使われる水酸化カルシウムは、
在来種であればその凝固剤としての使用量も少なくてすみ、
こんにゃく独特のあのにおいも少ないということ。
在来種のおいしいこんにゃく、ぜひ試してくださいね。
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